アーマードコア FROM SOFTWARE---狂人革命家(後編)
作:ひつぎ
~登場人物~
(♂6:♀2:不問1)
○オールドキング(♂) :30~40代、常に落ち着いた物腰だが
節々に狂気を帯びたベテランリンクス。搭乗するネクスト機は"リザ"
○マクシミリアン・テルミドール(♂) :20代後半、ORCA旅団長。毒舌だが、情熱もあり、
ロマンチスト。ネクストは"アンサング"
○メルツェル(♂) :20代前半だが、物腰は落ち着き、クールな紳士
ORCAの若き参謀。"オープニング"を駆る
○ジュリアス・エメリー(♀) :20代後半。ORCA創設時の5人の内の一人
ORCA唯一の女性であり冷静沈着で腕も一流
搭乗機は"アステリズム"
○ナレ(♂or♀) :
○セレン・ヘイズ(♀) :オペレーター。いつも冷静でリンクス戦争を経験した元リンクス
その腕は一流で、今でもひよっ子のリンクスには厳しい
以前搭乗したネクスト機体は"シリエジオ"
○ダリオ・エンピオ(♂) :野心家。陰のあるしゃべり方をする
○ジェラルド・ジェンドリン(♂) :リンクス戦争で優秀な戦果を挙げたレオハルトの後継人
ノブリス・オブリージュも彼から受け継いだ機体である
機体の名通り、誇り高く責任感が強い青年
〇ローディー(♂) :重量機を駆る古参リンクス
AMS適正こそ低いが経験とテクニックで補い、
今やGAの最高戦力とまで言われている。
カラード会議では、良きまとめ役のような落ち着きを見せている。
○アスイ(♂) :10代半ばの少年。後半で豹変する演じ分けの難しいキャラといえる
ネクスト機は"ジエンド"
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※かなりのネタバレ注意
AC4~AC4fAまでの内容
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BGM Thinker
ナレ
「遠い未来の話。
人型機動兵器アーマードコア。
パイロットはレイヴンと呼ばれ、
戦車や戦闘機を遥に凌ぐ最高戦力として
長き時代を奔走してきた。
そんな中、コジマ博士は特殊な粒子、
コジマ粒子を発見。
それを運用した新兵器『ネクスト』が開発され、
パイロットはリンクスと呼ばれた。
これにより、今までのアーマードコアは
『ノーマル』と称され、
ネクストに劣るものとして位置づけられた。
ネクストを開発した企業群は、
環境問題の改善、資源の枯渇など、
様々な問題に対処できなくなり、
完全に信用を無くした国家に対して、
クーデターを起こした。
それに至るまでの企業群の自信の裏づけが
このネクストでもあった。
かくして時代は、国家に代わり、
企業が支配する新体制、
『パックスエコノミカ』となった。
これは、その過酷な時代が生み出した、
狂人の物語」
間 BGM 終
テルミドール
「マクシミリアン・テルミドールだ
クローズプランを開始。
主要アルテリア施設に対し、
ネクストによる同時攻撃をかける。
ジュリアス、
君には、
アルテリア・カーパルスへ向かってほしい。
施設防衛の要、
ノブリス・オブリージュを撃破してくれ。
施設には多数の防衛設備、及びノーマルが展開している。
ノブリスの到着前にこれを撃破することを薦める。
以上だ。
最悪の反動勢力、ORCA旅団のお披露目だ。
諸君、派手に行こう」
ナレ
「海上アルテリア施設カーパルスにて。
ジュリアス・エメリーの駆るネクスト、
アステリズムによって、防衛部隊は壊滅状態にあった」
BGM Cosmos
ジュリアス
「こいつで防衛部隊は全部…か…
(防衛部隊最後の一機に留めを刺す」
ジェラルド
「作戦領域に到着。
これは…
防衛部隊が全滅…
20秒足らずでか…!?
こちらローゼンタール戦術部隊ノブリス・オブリージュ、
青いイレギュラーを排除する」
アスイ
「こちらジエンド、
リンクス・アスイ、
同じく作戦行動を開始する!」
ジェラルド
「カラードの傭兵か。
赤いネクスト、協力を感謝する」
セレン
「オペレーター。セレン・ヘイズだ。
ミッション開始。
覚悟はいいな。アスイ」
アスイ
「覚悟…?
カラード以外に僕の居場所はない。
覚悟なんてもんじゃないよ」
ジュリアス
「たった二機か…
警告はしたはずだが、
侮られたものだな、私とアステリズムも」
アスイ
「この有様は…
只者じゃないな…」
ジェラルド
「ああ、このクラスのネクストが動くとは、
反動家共め、何を考えている…
おい、そこのイレギュラー。
空き巣とは、なんとも情けない。
匪賊には、誇りもないのか?
生き易いものだな、羨ましいよ」
ナレ
「ジェラルド・ジェンドリンのノブリスオブリージュ、
アスイのジエンド、
ネクスト二機を相手でも、
全く怯む様子を見せず、
むしろ圧倒するジュリアス・エメリーと、
ネクスト、アステリズム。
その名の意は星の輝き。
永遠の輝きを名乗る、ジュリアス・エメリーの実力は、
かの天才、ジョシュア・オブライエンの再来と謳われ、
そのAMS適正は計り知れない数値を誇っている」
ジェラルド
「ネクスト一機で何をする気だ…
大胆に過ぎたな、イレギュラー!」
ジュリアス
「フッ、力みすぎだ。
当たらんよ」
セレン
「待て…!
敵ネクスト反応。
後方か!?」
ジェラルド
「ネクストだと!?」
アスイ
「ちっ!
もう一機いたのか!」
ジュリアス
「オールドキングか、グレイグルームはどうした?
この程度、私一人で十分だと言ったろう」
オールドキング
「メルツェルの指示だ。
仕方ないだろう」
ジュリアス
「メルツェルが?
馬鹿な、あの男が私の実力を信用していないというのか」
オールドキング
「いや、くれぐれもお前の邪魔をするなと言われている。
むしろ信用されていないのは俺のようだ。
その二機には手を出さねえよ」
ジュリアス
「どういうことだ。
じゃあお前は何をしにきたのだ」
ジェラルド
「二対二か。
こちらの増援はあと一人。
これ以上敵の増援が到着されては、
こちらの数的有利が見込めなくなるな…。
こうなっては…仕方がないな。
先に一機でも落すぞ!
加勢頼む、ダリオ・エンピオ」
ダリオ
「…ふう、
ここぞというタイミングを狙っていたが…
仕方がないな。
ローゼンタールのダリオ・エンピオだ。
トラセンド始動、作戦開始。
これより僚機を援護する」
ジュリアス
「…!?
ネクスト反応。
…なるほど、そういうことか。
恐ろしい男だ。
これを見越していたのか、メルツェルの先見も凄まじい。
…ではオールドキング。
指示通り、あのネクストの相手を頼む」
セレン
「来るぞ、
混戦になる。
敵の識別をしっかりしておけ。
傭兵が誤射なんてしてみろ、
洒落にならんぞ」
ジェラルド
「ノブリス・オブリージュの翼撃…
受けてみろ!(攻撃)」
ジュリアス
「おっと、(回避)
立派な羽だなあ。
だがまだ飛ぶのは早すぎたんじゃないか?」
ジェラルド
「速い…
このノブリス・オブリージュが、
…圧倒…されているだと!?」
ナレ
「ORCA勢力のネクスト二機と、
カラード側三機の戦闘は激化していく。
圧倒しているとは言え、
数的には不利なジュリアスも、
徐々にダメージを蓄積していく。
やがて…戦況は動いた」
BGM「Remember」
ジェラルド
「…!
緊急入電?
アルテリア・ウルナ他、
主要アルテリア施設が同時攻撃をうけているだと!?
しまった!
今の一瞬で…
見…失っ…」
アスイ
「上だ、ジェラルド!」
ジュリアス
「遅すぎるよ。(攻撃」
ジェラルド
「がっ!ぐはあっ!(被弾」
ジュリアス
「リンクス養成施設以来か…
鈍ったものだな、ジェラルド・ジェンドリン」
ジェラルド
「…!?その声は…!
なぜ君が…ジュリアス・エメリー…」
セレン
「ノブリス・オブリージュ、
急に動きが悪くなったな。
どういうことだ?」
ジュリアス
「レオハルトの後継として役割を果たしているつもりか。
だが彼には程遠い。
レオハルトの眼も節穴と見える。
…そこだ!(攻撃」
ジェラルド
「ぐぅ!(被弾)
…ローゼンタールの英雄たる彼を…
侮辱することは…
…いくら君でも許せない!」
ジュリアス
「ふん、そういう忠誠の姿勢と正義感を買われたのか。
ローゼンタールは昔から象徴だのバランスだの、
くだらないことにこだわるものだ」
ジェラルド
「黙れ!」
ジュリアス
「おっと、怒ったか(嘲笑)
君も変わらないな。
感情的になるなと、
あれほど教えただろう。
リンクス…失格だっ!(攻撃」
ジェラルド
「ぐあっ!(被弾)
何だ…装甲が一瞬でこんなに…」
セレン
「ハイレーザーだ!
注意しろ!」
ジュリアス
「終わりだ!(攻撃」
ジェラルド
「がはっ!
機体ダメージ…負荷限界…突破だと!?
まだだ!…まだ…!
私は勤めを果たしていな…(コックピット内出火)
ぐあっ!」
ジュリアス
「ジェラルド・ジェンドリン。
諦めろ。
既に私たちの歩む道は…違えている」
ジェラルド
「信じられん…
ノブリス・オブリージュがこうまで抑えられんとは…
ジュリアス…
私は…あの頃から君を…探して…」
セレン
「ノブリス・オブリージュ、戦闘不能。
馬鹿な…ローゼンタールの主力だぞ…?
こんなにあっさりと…」
ダリオ
「…やはり敗れたか、
ジェラルド・ジェンドリン。
『貴族の務め』など、大層な御託の割りに…ククク。
ノブリス・オブリージュを継ぐのは俺が最適だったのだ。
ローゼンタールも人選を見誤ったな。
まあいい、俺が尻拭いをしてやるとするか。
おい、傭兵。
あんたらでも名声は大事だろう?
がんばってくれよ。(嘲笑」
ジュリアス
「こっちが先に終わってしまうぞ、オールドキング」
オールドキング
「ふっ…(鼻で笑う」
ダリオ
「ぐっ!
ちぃっ、被弾した!
いつの間にプライマルアーマーが削られて…
おい赤いの、援護しろ!」
アスイ
「すまない、こっちも手一杯だ!
こっちが援護してほしいくらいだ。
こいつら、強すぎる…!
そっちのネクストは任せた!」
セレン
「そういうことだ。
自分の身は自分で守れ。
ダリオ・エンピオ」
ダリオ
「チィ…いい加点になると思ったが…
間違いだったな。
これほどとは…」
ジュリアス
「ローゼンタールも落ちたものだ。
この程度がトップランクとは…」
オールドキング
「これじゃあ俺一人でよかったなあ。
殺すなら一人でも多くってな」
ジュリアス
「…(少し呆れた様子」
オールドキング
「ふっふっふ」
ダリオ
「ぐっ、強い。
これがイレギュラーだと!?
カラードのトップランカーにも匹敵する…
いや、あのオッツダルヴァでも…」
オールドキング
「さあ、どうした。
難しいことじゃない。
お前か俺、どちらかが死ぬ。
わかりやすいだろう?」
ダリオ
「ちょこまかと…!」
アスイ
「やめろ、ダリオ、攻めすぎだ。
プライマルアーマーの回復を待て!」
ジュリアス
「言っても無駄さ。
彼らはプライドに生かされ、
プライドに殺される。
そういう生き物だ」
オールドキング
「そらよっ!」
ダリオ
「ぐはあ!
き、機体ダメージ…限界…。
こ、こんなところで…。
貴様らを…倒せば…
俺が…俺がローゼンタールのトップに…
ジェラルドを超え…(爆発」
セレン
「…トラセンド大破!
使えん男だ。
大口を叩いておきながらあの程度とは…。
敵ネクスト反応、更に接近。
これまでだな、引き上げるぞ」
アスイ
「チィ!
く、くそお!!」
(間)BGM 終
ナレ
「7月。多くにとって、突然にそれは起こった。
ORCAの名でマクシミリアン・テルミドールから、
声明があった」
BGM Welcome to the Earth
テルミドール
「私はORCA旅団を率いる、
マクシミリアン・テルミドールだ。
一部の人間は高度7000メートル上空のクレイドルで、
清浄な空気を満喫し、
一部の人間は地上で汚染された空気に咽ている。
このクレイドルを維持させるために、
大地の汚染はさらに深刻化し、
やがて、清浄な空さえも侵食し始めるだろう。
いや、すでに侵食し始めている。
クレイドルは、矛盾を抱えた延命装置だ。
このままでは、人は活力を失い、
諦観の内に壊死するだろう。
これは扇動だが、同時に事実だ。
To Nobles welcome to the earth!
(トゥー ノーブルズ ウェルカム トゥー ジ アース!」
ナレ
「それは、全ての空へ住む人々への明確な宣戦布告であった」
(間)BGM 終
テルミドール
「諸君、よくやってくれた。
これより計画は次のステップへと移行する。
衛星軌道掃射砲、エーレンベルクの制圧とその死守だ。
おそらく今までにない激戦となるだろう。
ここは銀翁の月輪に指揮を任せ、大部隊を編成する。
残りは、カラード側による、
各アルテリア施設の奪還を阻止する者とする。
特に最大のアルテリア施設、クラニアムについては、
私と真改が受け持つ。
それから…」
ジュリアス
「(間髪いれず)…テルミドール。
彼の姿が見当たらないが…」
テルミドール
「…オールドキングか。
全く、困ったやつだ」
(間)
ナレ
「カラード機構、
独立傭兵リンクス管理施設のアスイの自室」
BGM
アスイ
「僚機二機と防衛部隊を全滅させられ、
僕だけ生き残るとはな。
敵はたった二機だったというのに…」
ナレ
「そのとき、アスイは、
背後に何者かの気配を感じた」
オールドキング
「じゃあ、お前も死ぬか…?」
アスイ
「…」
ナレ
「銃口を向けられても動じないアスイ。
不適な笑みを浮かべる男が何者なのか、
アスイにはわからない」
アスイ
「何のつもりだ、貴様何者だ」
オールドキング
「思ったよりも若い…。
ふふ、それにしてもこの状況で動じないとはな。
その歳でかなりの修羅場を経験しているようだな。
カラードの首輪付き…
なかなかどうして、
面白い男じゃあないか」
アスイ
「どうやってここまで進入した」
オールドキング
「"ざる"なんだよ、カラードの警備システムなんざ。
まぁ、そんなことはどうでもいい。
実はな、少しばかりお前に興味がある」
アスイ
「何?」
オールドキング
「お前は今までにどれだけ人を殺した…?」
アスイ
「なんだと…?」
オールドキング
「初めて命を奪ったときのことを覚えているか?
殺すたびに熱くなることはないか…?
楽しいとは…思わないか…?」
アスイ
「ふざけてるのか…?」
オールドキング
「ふっ…(鼻で笑う)
テルミドールに聞いたんだが、
お前だけリンクスになる前のデータがないんだ。
どういうことなんだ?」
アスイ
「テルミドールだと!?」
オールドキング
「うちの大将さ。
元は企業連のお偉いさんらしい。
今やトップ企業のオーメル内で情報収集をしていて、
ほとんどの情勢については把握しているが、
どうもお前さんのことだけわからないそうだ。
気になって仕方がないらしい。
…お前はいったい何者なんだ…?」
アスイ
「…」
オールドキング
「お前がカラードにリンクスとして登録された時期と、
インテリオル・ユニオンから、
被験者が脱走した時期が妙に期間が近い。
そして霞スミカがウィン・D・ファンションを、
後継人に見立てた後、行方不明という。
そのあと無名の技術士官が、
急に実験施設配備となった。
まあ、その技術士官も被験者と共に脱走したらしいが…
…その技術士官の名はセレン・ヘイズ。
…セレンがスミカ、ヘイズが霞と捉えると、
なんとも面白い話になると思わないか?
俺は全部何かつながりがある気がしてならないんだ」
アスイ
「…!」
ナレ
「突然アスイは近くにあった果物ナイフで、
オールドキングに切りかかる。
が逆に組み伏せられた。
そしてオールドキングは、
何かを探すようにアスイの体を調べていく」
アスイ
「何のつもりだ!
やめろ!
は、離れろ!」
ナレ
「そして首の後ろ、AMSのプラグの近くに、
あるマークを見つける」
オールドキング
「ユニオンの実験施設のエンブレム。
やはりあの施設は人体実験を行っていたのか。
脱走した被験者は…お前だな…?」
アスイ
「この!」
オールドキング
「おおっと、へへ。
別にそういう趣味があるわけじゃねえ。
だが、お前は、
俺と同じ臭いがする。
…まあいい、目的は果たした。
いづれまた会うだろう。
次は…戦場でな」
アスイ
「おい!待っ…
(追おうとするが見失い、諦める)
…テルミドール…
オーメルで情報収集していた…?
…そうか。
生死不明のオーメル幹部オッツダルヴァ。
ORCAのマクシミリアン・テルミドール。
オッツダルヴァはグルジア語で28の意。
7月28日、フランス革命の日に起きた、
複数アルテリア施設同時攻撃。
全てはその男の…革命の、戯曲か」
(間)
ナレ
「数日後」
テルミドール
「リンクス、アスイ。
ネクスト、ジエンド。
…だな?
君に会いたいと言ったのは他でもない。
君に、我々ORCAの一員になってほしい」
アスイ
「僕に何のメリットがある」
メルツェル
「メリットはない。
…ただ、我々の敵にインテリオル・ユニオンがある。
君はユニオンからの依頼は、
あまり受けないようにしているようだ」
アスイ
「その理由は、もう知ってるだろ」
メルツェル
「それにだ、メリットがないとは言え。
断ればデメリットはあるぞ。
いづれ君たちの正体はバレてカラードを追われることになる。
…そうなれば、
カラードに君たちの居場所はなくなる」
アスイ
「…」
テルミドール
「脅すつもりはないが、
じっくりと考えて答えを聞かせてくれ。
話はそれだけだ…。
では、我々は失礼する」
ナレ
「その後、彼はテルミドールの誘いを受け、
ORCAに加わることを決意した。
いづれ訪れる人類の歴史の停止よりも、
痛みを伴う前進を選んだのだ」
(間)
テルミドール
「彼はよくやっている。
実に見ごたえがある人材だ。
引き抜いて正解だったな」
メルツェル
「そうとも言い切れん。
彼には謎が多い。
今までどおり警戒を怠るべきではない」
テルミドール
「お前が言うならそうしよう」
(間)BGM Intro
ナレ
「ORCA旅団の計画が進む中、
アスイの元に、
突然オールドキングからメッセージが届いた。
ミッションの依頼形式であるが、
普段ならオペレーターのセレンを通すはずである」
オールドキング
「(メールの内容)よう、首輪付き。
オールドキングだ。
クレイドル03を襲撃する。
付き合わないか?
ORCAの連中、温過ぎる
革命など、結局は殺すしかないのさ。
だろう?」
アスイ
「どういうつもりだ…?
クレイドルを襲撃するだと!?
馬鹿な…そんなことをしたら…
企業の連中は、
自らが嵌めたアサルトセルという枷を背負いながら、
クレイドルも守れないかもしれない…
いや、僕が出向けば確実に守れるはずがない。
…」
ナレ
「震える手でアスイは受諾にサインをする。
そして最後の一文字を書き綴る…。
『受けてしまった…』
彼はそのことに対する罪悪感を…いや、
これは、高揚感に似たものがあった。
彼の中で、
今何かが動き出していた」
BGM Remember
オールドキング
「来たか、首輪付き。
お前は俺と同じ穴の狢だ。
必ず来ると思っていたぜ、ふふ。
クレイドルを全て落とす。
所詮は大量殺人だ。
刺激的にやろうぜ…」
セレン
「お前は…
ただ殺すことだけを覚えさせたか…。
私の指導不足か…。
残念だ。もう一緒にやれん…」
アスイ
「なんだと!?
僕の何が間違っている!?
ORCA旅団のやっていることと同じだぞ!?
…おい、聞いているのか!
チッ!
覚えておくがいい!
僕が選んだ道も、お前たちのやっていることも、
大差ないということをな!」
オールドキング
「首輪付き、吼えてないでお前も手伝え。
手間をかけさせるなよお前一人に。
大勢待ってるんだからなぁ(ニヤけながら)…」
アスイ
「わかっている!
ふん!(攻撃を繰り出す」
オールドキング
「一基落としたか、
これで2千万ほど死んだ」
ナレ
「その言葉を聞いた時、
アスイは一瞬固まった」
アスイ
「に…二千万…
二千万だと!?
こんな簡単に…二千…万人も…。
殺…した…?
くふははははは」
オールドキング
「ふふ、酔いしれろ。
そぉら、もういっちょ、四千万」
アスイ
「なかなか落ちない…」
オールドキング
「甘い…
クレイドルのエンジンを狙うんだ」
アスイ
「そうか、ここが弱点だな…
くはははは!」
オールドキング
「(鼻歌終わりまで鼻歌を奏で続ける」
アスイ
「悲鳴が、一基落とすごとに二千万人の悲鳴が聞こえる…!
どんな甘美な歌声よりも美しい」
オールドキング
「(間を作らない)六千万…」
アスイ
「(間を作らない)絶望のセレナーデだ…くははははは!
一基落とすごとに奏でて…これじゃあまるで…」
オールドキング
「(間を作らない)八千万…」
アスイ
「(間を作らない)これじゃあまるで、
ゆりかごじゃなくてオルゴールじゃあないか!」
オールドキング
「(鼻歌終わり)…一億!!
…終わったか。
まだまだ腐るほどいるがなぁ。
面倒だが、先は長いぜ、相棒。
…ん?おい!」
アスイ
「(狂ったように笑う)ひゃはははは!」
オールドキング
「ちっ、ちょっとネジを巻きすぎたか。
…だが嫌いじゃないぜ」
(間)
ナレ
「もはや狂気そのものと化した彼らは、
殺戮を繰り返した。
オールドキングはアスイに、
殺しの魅力を徹底的に刷り込んだ。
その目は狂気に満ち、
時に悲しげでもあり、
時に使命感も帯びていた。
そんな彼をアスイは謎に思いながらも殺戮の衝動に、
その身を焦がしていく」
セレン
「…問題ない…」
ジュリアス
「(溜息)
国家解体戦争に参加した、
最初期からのリンクス。
貴方の協力はうれしいが…セレン。
我々もすでに、あのジエンドのリンクス…
それと貴方の関係。
調べは付いている。
その上で聞いているのだが…
本当にいいのか…?」
セレン
「…ああ。
子を叱るのは…親の役目だ…
そして、来るべきその時はきた」
(間)BGM Scorcher
オールドキング
「よう、首輪付き。
お前もこの依頼がきていたのか。
ふん、そうだろうな。
ま、俺は殺しができればなんでもいいがな。
…ふふふ」
アスイ
「どう考えてもおかしいだろう。
この任務の意味を理解してないのか?
オールドキング」
オールドキング
「わかってるさ。
だから言ってるだろう?
殺しができれば何でもいいって。
ま、少ない人数だが、大物であることは間違いない」
アスイ
「…?」
オールドキング
「…なんだ。
理解してないのはお前のほうじゃないのか?首輪付き。
…ほら、来たぜ」
ジュリアス
「だまして悪いが
お前達にはここで果てていただく。
理由はわかっているな」
ローディー
「まあ、そういうことだ。
どうせ、確信犯なんだろう。
話しても仕方がない」
テルミドール
「所詮は獣だ。
人の言葉も解さんだろう」
(間)
オールドキング
「ふっふっふ。
戦争屋風情が偉そうに、
選んで殺すのがそんなに上等かね」
ジュリアス
「殺しすぎる。
お前らは…」
セレン
「ふざけるなよ、
狂人が!」
(間)
ナレ
「制裁の時は来た。
この狂気の化身のような二人を粛清するために選ばれた強者達。
ネクスト機5機と2機の戦い。
この圧倒的不利な状況にあっても、
この二人には、
"殺し"という魅力的な行為を行えるシチュエーションでしかない」
セレン
「このシリエジオに再び乗る機会が来るとはな」
アスイ
「セレンか…」
オールドキング
「おやおや、
レオーネ・メカニカの最高戦力とまで言われた、
かの有名な"霞スミカ"様がおいでとはね。
"再びリンクスになった"こと、後悔するなよ?」
テルミドール
「強がるなよ…
この数とメンツでは、
もはや貴様らではどうにもならん」
ローディー
「だが、殺すには惜しいな…若すぎる…
どうして道を誤ったものか…」
アスイ
「なに勝った気でいるんだよ。
クフフフ…ほぉら、
一人消えた…ぜ!」
ローディー
「ぐあああ!」
セレン
「これは…!」
ジュリアス
「コ、コジマキャノン…!?」
テルミドール
「ローディー!!」
ローディー
「コジマだと…
おのれ外道…
…だめだ、動かん…
…すまんな…みんな…」
テルミドール
「…今やつはコジマ粒子を全て使い果たした。
プライマルアーマーのない丸裸の今がチャンスだ」
オールドキング
「おっとぉ、そうはさせないぜ。
あいつに全部とられてたまるかよ」
テルミドール
「くっ…
やはり簡単にはやれんか」
メルツェル
「たった2機とはいえ彼らは間違いなく最高クラスのネクスト2機だ。
手堅く削っていくほうが無難か」
セレン
「私の見込んだ男なだけはある。
皆覚悟してかかれ」
ジュリアス
「言われなくとも…
それにしても…なんて臭いやつらだ。
クイックブーストですれ違うだけで空調を伝って
血の臭いがする」
メルツェル
「あの真紅の機体色…本当にカラーリングなのか…?」
オールドキング
「さあ、お前の死に様はどんなだ?
見せてくれよ…」
テルミドール
「メルツェルを狙っている…
援護しろ!」
メルツェル
「くっ…!
狂人め、貴様には、死を持って分からせる他ないようだな。
いや、死んでもわかるまい。
我々と貴様らのやり方の違いはな…」
オールドキング
「そりゃそうさ、殺しこそが至高の理論。
殺しているんだ…殺されもするさ。
こいつぁ違えることはできない」
セレン
「ご立派な思想だが、
人間にはその考えはいささか受け入れがたいのだよ」
アスイ
「その身に刻めば嫌でも受け入れるさ」
ナレ
「ジエンドが再び青白い閃光を放った。
それはテルミドールのアンサングの装甲を大きく削った」
セレン
「無事か!
テルミドール!」
オールドキング
「おい、首輪付き、あんまり調子に乗って俺の獲物まで持っていくなよ」
テルミドール
「直撃こそ免れたが、
こんなに早く第二射が…
…(何かに気づいたように)まさか…」
メルツェル
「コジマチャージャー…。
厄介だな…
プライマルアーマー貫通力の高い兵器を使うんだ!
地道に削っていては話にならん!」
ジュリアス
「まずい、以前のやつとは違いすぎる。
数的有利が…
感じられないだと…!?」
アスイ
「ほらほら、どうした?
"正義"の殺戮者さん達よぉ…」
テルミドール
「獣が…一緒にするな」
オールドキング
「何いってやがる。
どうせお前たちのやり方でも同じぐらい死人が出るさ。
俺が引き金を引いてクレイドルを落とそうが、、
お前らがアサルトセルをぶっ壊してクレイドルを落とそうが、
直接か間接かの違いなだけなんだよ。
だったら刺激的なほうがいいだろう?」
アスイ
「そうだよ…
それに、俺の方が殺した数は上だ…
殺戮とは進化…
お前たちは俺に劣っているんだよ!
アハハハハハ!」
ジュリアス
「テルミドール、はじめに言っただろう。
問答は無用だ」
テルミドール
「ふん、私も愚か者だな。
獣と解して、まだ言葉を交わそうなどと。
無駄なことであるというに」
セレン
「…」
ナレ
「テルミドールは、そういうと集中力を急激に高め、
オールドキングのリザに猛攻撃をかける。
無駄のなく、天才の戦い方で…」
メルツェル
「アンサングを援護しろ。
彼の勢いは流れを変える」
オールドキング
「おっと、
もうこんなに装甲が削られているのか。
もうちょっと楽しみてぇなぁ…」
アスイ
「援護する、オールドキング」
メルツェル
「なっ!」
ナレ
「ジエンドが凄まじい速さで、
最後尾に位置していたメルツェルの背後を取った」
メルツェル
「こいつ、とんでもないAMS適正を…!」
セレン
「ユニオンの実験は…
成功…していたのか…!?」
メルツェル
「ぐ…実験だと?
ど、どういうことだ…?」
セレン
「それは…」
アスイ
「うるさい、黙れー!」
セレン
「うぐっ…」
メルツェル
「ア、アサルトアーマー…!
まずい、
このコジマ汚染度に、
彼女の体は耐えられるのか!?」
ナレ
「リンクスである時間が一番長かったセレンは、
機体よりも、
コジマ汚染による肉体のダメージが深刻だった」
メルツェル
「セレン、後退しろ!
ここは私が…」
アスイ
「邪魔だあああ!」
メルツェル
「ぐうう!耐えろ、
オープニング…!」
ナレ
「アスイの放ったコジマキャノンでは、
メルツェルのオープニングは、
その重厚な機体でも耐えることはできなかった。
そして、機能を停止し、海中に沈んでいく」
メルツェル
「こんなところで…
やはり私ではこの程度か…」
テルミドール
「メルツェル…!」
ナレ
「レーダー上から
静かにメルツェルの反応が消えるのを確認すると、
テルミドールのアンサングはさらに加速する。
アンサングはリザを
アステリズム、シリエジオはジエンドを、
今や数的有利などなくなった。
純粋に"勝ち"を求めた。
だが、そのとき、
アステリズムがジエンドのフェイントからの一撃に被弾する」
ジュリアス
「うああっ!」
テルミドール
「ジュリアス、大丈夫か!」
ジュリアス
「今の被弾で、
ガラス破片が目に…!」
テルミドール
「そうか、こっちはずいぶんと前から腹に破片が刺さったままだ」
ジュリアス
「…ふ、ふははは…
よく落ち着いてられるなぁ、この状況で…
よくやるよ…貴様、も…」
アスイ
「とどめだ、
(笑いながら)…死ねぇ!」
ジュリアス
「すまんな、テルミドール。
もはや…共に成就は…叶わん」
ナレ
「アステリズムは搭乗部のあるコアを、
ブレードで貫かれた」
テルミドール
「見届けたぞジュリアス。
もはやORCAは私だけか、
なに、タダでは死なんさ」
セレン
「テルミドール、早まるな!」
ナレ
「アンサングは弾の切れたライフルをリザに投げつけた」
オールドキング
「おぉっと、なんだ?やけになっ…」
ナレ
「それを払ったリザの視界からアンサングは姿を消した」
オールドキング
「…どこだ?」
テルミドール
「殺(と)った」
BGM Thinker
ナレ
「アンサングは水面下にクイックブーストで突っ込み、
視界から消えていたのだった。
そして、リザの真下からありったけのミサイルを放った」
オールドキング
「ぐはっ!
…くっ…
機体ダメージ限界…か
…へっ…すまねえな相棒。
どうやらこのあたりが俺の器らしい…
良かったぜ、お前とは…」
アスイ
「らしくないな。
最後に自分すらも殺してみせろよ。
…ああ、そうか、俺が殺してやろう!
お前は俺に殺されて…」
オールドキング
「そいつぁだめだ。
俺は”人類”に殺されなければならない」
アスイ
「なに…?」
オールドキング
「俺もお前も、
人類の進化の糧だ。
俺達を打ち倒すために人類は結束しなければならない」
アスイ
「な、何だと…!?」
オールドキング
「お前はここで倒れてはだめなんだよ。
もっと、もっと、もっと殺して、
企業連の連中にも危機感を与えるんだ。
そして人類を結束させる。
そうしなければこのご時勢、
人間は腐っちまうんだ…」
ナレ
「各所で爆発を起こし、沈んでいくリザ」
オールドキング
「ぐふっ…!
げはっ!(激しく吐血」
アスイ
「ど、どういうことだ!
俺は、お前に利用されていたのか!?」
オールドキング
「結局お前は飼われていたのさ。
企業にもORCAにも…そして俺にもな。
だから言ってるだろう。
お前はいつまで経っても、
”首輪付き”…だってなあ…」
ナレ
「沈むリザの横から、水面へ出ようとするアンサング」
オールドキング
「…わかってるさ…
怒ってるんだろ?
だが、最後に言うこと聞いてくれよ、
なあ…リィィザァァ…」
ナレ
「オールドキングが最後の力を振り絞り、
ショットガンをアンサングへ向ける」
テルミドール
「ぐっ!
くそ…もう…だめか。
なんて無様な戯曲だ…
笑えん…。
貴様は我々を…ORCAの名を貶めた…
許せん…
だが、その貴様を引き入れたのは私だ。
これは、その落とし前なのだろう。
私が消えることで、ORCAは瓦解する。
貴様もORCAも海の藻屑だ。
全ては幻想に…すぎなかったか…」
セレン
「残るは私とお前だけか。
お前とこうなるとはな…
残念だが、私のまいた種だ。
…"刈らせて"もらうぞ」
アスイ
「あんたには感謝している。
ユニオンの被験者だった俺を救ってくれたこと。
ここまでリンクスとして育て上げてくれたこと。
だが…もう遅かったんだ」
セレン
「どういう意味だ…?」
アスイ
「やつらの実験は、
もう成功していたんだよ。
俺はもうAMSのプラグを抜けば、
おそらく意識が二度と戻らない。
そして、殺しの衝動は抑えられない。
AMS適正も異常なほどだ。
すごく馴染むんだ」
セレン
「そうか…。
実は、その実験。
私が担当していたんだ」
アスイ
「やっぱりか。
上の人間に言われてたんだろう。
なんとなく気づいていた」
セレン
「すまないと思っている。
だが、その罪滅ぼしのつもりで、
お前をあの施設から連れ出した」
アスイ
「…オールドキングが…
やつが言ったんだ。
俺は、殺し続けなければならない。
そして、俺を殺そうと人類が結束する。
その結束がなければ、
人類は前に進めない。
醜い争いの輪廻から抜け出せない」
セレン
「まさか、
やつが殺戮者に走ったのは…
そのためだというのか…
ありえん!
そのために、あれだけの人間を殺せるわけがない!」
アスイ
「彼にはできるんだ。
そういう人間だったんだ。
ネクストに自分の恋人の名前をつけるような、
そんな男なのだから…」
セレン
「もういい、そこまでだ。
もう止めよう。
私とお前で、どこか遠くで静かに暮らそう。
お前が…そこまで全てを…
犠牲にする必要はない」
アスイ
「はははは!
違うんだよ!!
(泣きながら笑って)
俺は…俺は…殺戮を楽しんでいた。
彼とは違うんだよ!!」
ナレ
「アスイの精神はすでに崩壊寸前で、
悲しんでいるのか、
楽しんでいるのか、
もはや本人にもわからない」
アスイ
「あいつのせいで、
中毒みたいに、
殺さないとダメになってしまったんだ」
セレン
「オールドキング…
お前は…なんてことを…!
彼を犠牲に、目的を果たすつもりか…!
自分すらも捨て駒に…
死してなお、彼に…目的を遂行させるのか!」
アスイ
「おしゃべりは終わりだ…。
あんた一人に手間を取らすわけにはいかないんだよ。
まだまだ大勢待ってるんだ」
ナレ
「コジマキャノンを向けられているが、
もはやセレンに、
これを回避する意味は、
残っていなかった」
セレン
「当然か、私が見込んだのだからな。
お前にやられるのも悪くない。
ふふ…最高だよお前は…私の最高傑作だ!」
BGM Scorcher
ナレ
「沈んでいくシリエジオを前に無言で飛び立つジエンド。
その後、クレイドルは彼によって深刻な出血を強いられる。
アスイは人類史上最も多くの人命を奪った個人として、
人類種の敵とまで言われた」
アスイ
「俺は地獄からやってきた!
見つけてみせろ、駆り立ててみせろ!
俺は一人でもやれるぞ。
抵抗しろみせろ、叩き潰してみせろ!
それがお前たちの…糧となる!」
BGM Endroll
ナレ
「やがて、人類は結束し、
この事態に臨む。
企業やカラードなんてものは、
あの男が望んだ通り、
存在しない世界が出来上がる。
そう、彼の幻想は、
その答えをようやく…導き出したのだ」
アスイ
「(徐々に意識が薄れだす)
…ははは…あれ、なんだ…どうして…
体が…動かない…。
限界なのか…?
嘘だろう?
まだ…全員殺して…ない…
これじゃああいつの…
思惑通りじゃ…ないか…
いやだ…いやだ…俺は…首輪付きなんかじゃ…
あれ…涙が…とまらな…」
セレン(M)
「…なんだ…慰めて欲しいのか?
……母様に…」
~~終わり