アーマードコア:Serene's Episode 1 ~国家解体戦争
作:ひつぎ
(♂2:♀1:N1)
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♀霞スミカ :20代。高い技術力と冷静な人格を併せ持つ。
聡明な女性。
どこか冷めたところもあるが、
女性らしい一面も時々見せる。
♂ロイド・クラーケン :30代。レオーネ・メカニカ入社から、
一気に出世の道を猛進する若き重役。
その裏には、
多額の賄賂が存在するという噂も。
♂ジェフェリー・クライトン :30代。ロイドの同期。
ロイドとは部所が違っていたが、
彼もまた、負けず劣らすの能力を持っている。
情熱的な一面を持つが、
その反面直情的にもなりがちなため、
反発を繰り返し、出世には縁遠い。
Nレオーネ社員 :20代。ロイドに目をかけてもらっている新米。
実力は本物で、
入社から驚くべき成長をしてきている。
だが、精神的な成長は、
伴っておらず、落ち着かない様子や、
緊張が見て取れる。
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ロイド
「弊社のネクスト技術最高責任者、
ロイド・クラーケンだ。
…霞スミカ君だったね。
もう"受けた"のかね?」
スミカ
「適正検査ですか?」
ロイド
「ああ。
もう我が社だけでも三人適正者が見つかった。
君にも、適正があるやもしれん。」
スミカ
「私などが・・・」
ロイド
「君の技術力は大したものだ。
だが・・・こっちのほうが、
君の性分に合っていると思うがね。」
スミカ
「・・・」
(間)
レオーネ社員
「素晴らしい数値です!
四人目の適正者…!!」
スミカ
「・・・」
ロイド
「君も胸を張りたまえ!
名誉なことだ!
早速専用のネクスト開発を急がせよう!」
(M)スミカ
「私の意見など関係なし・・・か。
最近の企業はどこもそうだ。
新兵器ネクストの開発に全技術と資産を投入して、
血眼になって適正者を探している。
宇宙開発も急に中止。
関わっていた連中は行方不明という。
まるで当たり前かのように、
行方不明者のことは多くは語らず、
こんなことの毎日だ。
一体どういうつもりなのか・・・
形振り構わないその姿勢には、
何か裏事情がありそうだとさえ思わせる。
こんな少女でさえ、ネクストに乗せようとするのだから・・・」
ロイド
「はっはっは、驚いたかね、
彼女は、
セーラ・アンジェリック・スメラギ君だ。
最年少で適正が見つかった、
我が社の研究理論を裏付ける、
立派な成功例だ!」
スミカ
「こんな子供まであんな禍々しい兵器に・・・」
ロイド
「ん・・・?」
スミカ
「あ、いや・・・。」
ロイド
「とにかく、君で四人目だ。
素晴らしいことだ!」
スミカ
「はあ…」
ロイド
「そうだ…
近々君に社の上層部から声がかかると思う。
とても重要な話だ。
是非承諾してもらいたい。」
スミカ
「それは聞いてみないことには…」
ロイド
「そうだろうな。
だが、おそらく君は承諾するよ。
…それと、次の幹部会議には、
君も出席してくれたまえよ。
では…」
スミカの背後からジェフェリーが不意に話しかける
ジェフェリー
「…気になるよな。」
スミカ
「…?あなたは…」
ジェフェリー
「ジェフェリー・クライトン。
よろしく、一応僕も適正者だ。」
スミカ
「霞スミカだ。
レオーネ・メカニカの…」
ジェフェリー
「知ってるよ。」
スミカ
「え?」
ジェフェリー
「君の入社当時からずっと見てきたからね。
入社以来ネクスト技術部門をひた走り、
出世街道まっしぐら。
優秀な技術将校として名高い美女。
君のファンは多いよ、
僕も応援してたんだ。」
スミカ
「は、はあ…」
ジェフェリー
「そうだ、
今度ディナーでも如何かな?」
スミカ
「構わないが…」
ジェフェリー
「これ、僕のアドレスだ。
気が向いたら連絡をくれ。
じゃ、
…これでお互い、リンクスだな。
一緒に頑張ろう。」
スミカ
「…ああ。」
~~後日~~
ロイド
「おお、来たか霞君、
さあ、早く座りたまえ。」
(M)スミカ
「これは…
GAに…レイレナード…ローゼンタールまで!
こんなに大企業の幹部が勢ぞろいとは…
いったい…何が…」
ジェフェリー
「遅れてすみません。」
ロイド
「おお、来たか、
これで全員だな。
…これより、緊急会議を始めます…
では、本案件の大まかな概要から…」
レオーネ社員
「はい。
まず、政府の提案してきた条件を承諾するか、ですが…」
ロイド
「それは飲めないと言っているだろう!」
レオーネ社員
「は、はい。
そうなりますと、
現状では、
国家軍との全面戦争以外に方法はないかと思われます。」
ジェフェリー&スミカ
「!?」
ジェフェリー
「なんだって!?」
スミカ
「一体何の話ですか!?」
ロイド
「まあまあ落ち着きたまえ、
重役方の前で失礼だぞ。
…弁えよ。」
スミカ
「…」
ロイド
「続けろ。」
レオーネ社員
「政府の提案した条件を飲まない場合、
我々の開発したアサルトセル…」
ロイド
「(遮る)…君、それは関係ないだろう?」
レオーネ社員
「ですが…」
ロイド
「(遮る)…必要なことだけ…説明すればいい…
…わかるな?」
レオーネ社員
「は、はい…
失礼しました。
…条件を飲まない場合、
我々企業を…
む…無条件に解体させる…と…」
ジェフェリー
「…どうして急にそんな横暴に…」
ロイド
「まあまあ黙って聞きたまえ。」
レオーネ社員
「そこで、諸企業の最高責任者方の同意の下、
本作戦に使用するネクスト機の開発と、
搭乗者の摸索が急務との結論に至りました。
延いては、貴方々リンクスに、
本案件の重要性を理解した上で、
臨んでほしい…と。」
ジェフェリー
「それは…
我々に戦争をしろ…と…
そう仰るのですか…。」
ロイド
「我社の社員が、
社の存亡を賭けた戦いに参加するのは、
当然だろう。
…それとも、
今の政府に満足しているのかね…?
こんな現状でも私利私欲に走り、
何一つまともに管理できていない政府に…」
ジェフェリー
「…」
レオーネ社員
「各社で現在研究中のネクスト機を実戦投入するのは、
今回が初となります。
同時に、各社のリンクスも作戦に参加することになります。」
ロイド
「君らだけではないのだよ…
各企業がこぞってこの戦争に賭けている。
我々だけではない…
…わかるかね。」
スミカ
「我々が断ることはできない。
他の企業のリンクスで始末もできる…と。」
ロイド
「(嘲笑いながら)おいおい、
そんな物騒なことまで言うつもりはないよ。
ただ…ネクストの戦力とは神の様な力だ。
そんな力を持っていながら、
出し惜しみをしていては…
その後の君らは、
とても、社に居ずらくなるのではないのかね?
…今の世の中、
生活は苦しいぞ…」
スミカ
「…」
レオーネ社員
「では、計画の詳細をフローチャートで…」
~~フェードアウト~~
(間)
ジェフェリー
「ロイド!」
ロイド
「…なんだねジェフェリー君、
私と君は友人とはいえ、
立場上私は上司だ。
気をつけたまえ…」
ジェフェリー
「そんなことはどうでもいい!
どういうことだ…
あれは…あの計画は…!
国家に対する明確な反逆行為だ…」
ロイド
「ジェフ…時代は…変わったのだ…」
ジェフェリー
「悪い方にな…!」
ロイド、いきなりジェフェリーの胸ぐらを掴む
ロイド
「…ジェフ…!
黙って俺の言うことを聞け、
ニュースを見てみろ、
毎日毎日政府首脳の言い訳会見だ!
資源は枯渇しかけ、
汚染は拡大し続ける、
人民は貧困で苦しみ、
政府だけが私腹を肥やす…!
これのどこが国家だ?あ!?
…今や国家の力は衰退した。
我々企業だけが、
軍事力の提供によって生かされている。
いや…もはや我々企業が国家を生かしている…」
ジェフェリー
「違う!
生かし生かされではなく、
相互の均衡や秩序が現状を支えているのだ!」
ロイド
「ジェフ…」
ジェフェリー
「我々の成すべきことは、
国家のために新しい技術を開発し…!」
ロイド
「…ジェフ…!」
ジェフェリー
「現状を打破するための足がかりを提供することに…!」
ロイド
「ジェフ!!」
ジェフェリー
「…」
ロイド
「貴様を雇用しているのは…
我々だ…
貴様が企業の在り方を説くなど…
身の程を知れ!!」
ロイド去っていく
ジェフェリー
「…」
ロイド去るのを確認して
スミカ
「随分と仲が良さそうだな。」
ジェフェリー
「スミカ…」
スミカ
「企業のやり方が気に入らないのか。」
ジェフェリー
「いきなり戦争だなんて、
あまりにも一方的すぎる。
君もわかっているだろう。
ネクストには、二つの神の力がある。
一つはプライマルアーマー、
ネクスト全体に張られた防御膜には、
そこらの兵器ではネクストに傷一つ付けられない。
そして驚異の推進力を持つ各種ブースター、
一瞬で戦闘機にも勝る速度を実現し、
傷はおろか、
攻撃を加えることすら難しくさせるクイックブースト。
だがその反面、
放出されるコジマ粒子が、
どれほど大気を汚染するか計り知れない。
こんなものが戦争に使われれば…
…業に反することだ…
コジマ技術は…
パンドラの箱だったのかもしれない…」
ジェフェリー煮え切らない思いで拳が固まる
スミカそれを見て少し考える
スミカ
「…お前の言いたいことはわかる。
私も同意見だ。
だが、こうも言う。
郷にいっては郷に従え。」
ジェフェリー
「言葉遊びか?」
スミカ
「いや…
だが私達がそのことを説いたところで、
諸企業の意思は、
ましてや、
それを実行するリンクス達の意思は覆せない。
ここは、
時代の流れに身を任せるしかないのではないか。」
ジェフェリー
「『俺一人正論を振りかざしたところで、
何も変わらない。
諦めろ』と…
そう言いたいのか!?」
スミカ
「じゃあ国家側について、
一緒に滅べばいい。
神の力だと…
馬鹿馬鹿しい。
こんなものは世界を破滅させる、
悪魔の力だよ。
…だが、私は必要悪なのかもしれないと、
考えている。」
ジェフェリー
「…」
スミカ
「頭は冷えたか?」
ジェフェリー
「…うん。」
スミカ
「そ… じゃあ、いくぞ…」
ジェフェリー
「…?
いくって…
どこへ?」
スミカ
「ディナーの約束だっただろう?
自分で言っておいて、
もう忘れたのか?」
ジェフェリー
「…
全く…
君という女性は…
…喜んで…」
(M)スミカ
「数ヵ月後、
秘密裏に計画を進めていった六大企業グループ、
GA、ローゼンタール、イクバール、
レイレナード、インテリオル・ユニオン、BFFを中心に、
リンクス二十七名、
ネクスト機二十七機は、国家軍に対して宣戦布告する。
後に、"国家解体戦争"と呼ばれたこの戦いは、
戦争というには、あまりに一方的過ぎた。
ネクストのプライマルアーマーは強力すぎた。
唯一ダメージを与えたのは核兵器。
しかしそれでも撃破には至らず、
圧倒的なまでのネクストの力の前に、
国家軍が壊滅するまで、
一ヶ月と持たなかった…
そして、国家という存在はなくなり、
企業の支配する新しい時代を迎える。
私は予感していた。
このネクストが、
リンクスが、
世界の中心になる時代がくると…
それは、これまで以上の地上の汚染を…
そして、新しい戦争の時代を意味するだろう。
(タイトルコール)
アーマードコア:Serene's Episode 1 ~国家解体戦争」
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